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交通事故を起こしたときの車の損傷状態をあらわす言葉として「全損」というものがあります。
全損と聞けば、だいたい誰しもが同じような状態を想像することになるかと思いますが、たぶんその頭に思い浮かべた全損状態の車と自動車保険を扱う損害保険会社の全損状態とでは大きな違いが出ることになるでしょう。

 

俗にいう「全損」

我々が「全損」という言葉を聞いて、頭に思い浮かべる車の状態はまさにめちゃくちゃな状態、例えば、フロント周りはグチャグチャですでに車種判別すら難しい、エンジンからは緑やオレンジ色の冷却水や、真っ黒なエンジンオイルなどがダラダラと漏れており、室内を見るとエアバックがすべて作動し、そのエアバッグには若干血の跡があったりする。
後ろ側を見てもトランクフードが跳ね上がっていて、3ボックスセダンが2ボックスモデルに変化しているような有様、こういったものが想像の中で出てくるわけです。

我々一般人にとっては、あくまでも「全」「損」ですから、もう修理しても乗ることができない、エンジンも再生不可能といった形を想像するわけです。

こういった解釈はもちろん間違いではありません。
この状態を見れば、損害保険会社の担当員ですら「全損です」ということでしょう。
しかし、損害保険会社ではこの状態を全損とするのではなく、これよりもずっと損害が軽度な時点から全損扱いとします。

 

自動車保険としての全損

自動車保険では、以下の3つの条件のいずれかが該当した時に全損という扱いをします。

  • 完全修復が不可能な状態
  • 盗難事件にあい、まだ車が見つかっていない状態
  • 修理費用が保険価額以上なる場合

修復が不可能な状態というのは、まさに一般的に言われる全損といったもので、車としての形状すら持っていない状態、エンジンやトランスミッションも修理がきかない状態、フレームが完全に逝ってしまっている状態などを指します。
盗難はその名のごとく、盗難事件にあってしまい、見つかっていない状態を示します。
そして、最後の修理費用が保険価額以上になる場合というものですが、これが実はいわゆる全損と自動車保険での全損との解釈の違いを大きくしている原因となっているものです。

 

修理費用と保険価額

自動車保険としては、1台の車の価値を、個人的な想い入れや中古車としての価値観といったようなことから決めるのではなく、単に現時点でのいろいろなファクターによってきめられた協定保険価格というもので判断します。
協定保険価格というのは、その車の時価であることが多く、それが車両保険に加入した時の保険価額としても扱われることがあります。

自動車保険では、その価値、要するに現時点での時価と損傷を修復するためにかかる修理費用を比べて、価値よりも修理費用の方が高くなった状態でも「全損」という判断をするのです。
ですので、一般的にポンコツと呼ばれる状態も当然ながらこれに該当するわけで、私たち一般人の解釈が間違っているわけではないのですが、自動車保険ではもっと軽い損傷でも全損になる可能性があるということになります。

 

全損扱いになるとどうなる?

自動車の損傷から全損扱いにされた場合、自動車保険ではどういった形で処理するのかというと、まず基本的にはその車の損傷に対する補償は時価までということになります。
賠償金が支払われる出所は、自分の車両保険か相手の対物保険となり、相手がいる事故なのかそれとも自損事故なのかなどの事故の内容、また相手がいる時の事故では過失割合によってもどちらからお金が出るか、どこに請求をするのかが変わってくることになります。

 

車両保険を使う場合

単独事故や自損事故、圧倒的に過失割合が不利である場合は車両保険を使うことになります。
車両保険を使う場合は、加入時に決めた時の時価額を上限として、現状の価値の中で保険金を請求することになります。

例えば、加入時の価値が200万円という車両保険に加入していたとします。
その後、単独事故で修理費用が250万円かかるといった自動車保険での全損「経済的全損」状態になってしまい、その時に車両保険を使って保険金の請求を行ったとします。
その時に支払われる金額は200万円ということになりますが、損害保険会社によっては、時価が180万円に下がってしまっていることで、その時価を上限とする場合もあり、180万円まで保険金しか支払われないこともあります。
ということはその差額、50万円や70万円という金額は自腹で払うことになるということです。
ただし、車両保険の特約として「車両全損時修理費用特約」といったものなどに加入している場合は、50万円を上限として、保険金が増額されることもあります。

 

相手の対物保険を使う場合

相手がいる事故で相手が自動車保険に加入している場合は、その自動車保険の対物保険によって賠償金が支払われることになります。
しかし、この時も全額負担ということではなく、時価を上限とするため支払われる賠償金額には制限があります。

例えば、過失割合0:100で相手が確実に悪いといった事故、信号停止中に後ろから突っ込まれたなどといった事故の場合で、自分の車の時価が150万円で修理費用が200万円だったとしても200万円の賠償金を得ることはできず150万円を受け取る形になります。
残りの50万円はどこからも出てくることはありませんので、自分で払う必要があるのです。
ただ、この場合にも相手が対物賠償超過費用特約などに加入していれば、50万円をめどに増額することができます。

 

全損は損?

自動車保険でいうところの全損は、早い話、修理費用が掛かる損害を受けた状態で、その車を乗り続けるのであれば間違いなく自分の財布を痛めつけることになります。
ですので、全損はある意味で車や体以外にも金銭的にも大きなデメリットをもたらしてしまうのです。
自動車保険というものは、もしもの時のために加入するものですが、そのもしもの時にすべてを任せて、すべての損害を補償してくれるわけではないということを覚えておきたいものです。