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ここ最近の主流となっているCVTやオートマチックトランスミッションを搭載したモデルでは、セレクターレバーをDレンジやRレンジなど走行するモードに切り替えたあと、ブレーキペダルを放すだけで車をゆっくりと走らせることができます。
それがいわゆる「クリープ現象」というもので、これはCVTモデルやオートマチックトランスミッションモデルを作るうえでどうしても発生してしまう副作用のようなものといっていいでしょう。
しかし、実際にはそのクリープ現象を超低速走行に利用することにしており、現在では副作用という形で捉えるのではなく、CVTモデルやオートマチックトランスミッションモデルの機能として扱われています。

 

クリープ現象が発生するわけ

クリープ現象はある一つの構造が付けられていることによって起こる現象です。
その構造というのがトランスミッションの一部となっているトルクコンバーターと呼ばれるものです。

 

オートマチックトランスミッションの構造

クリープ現象を知るにはまずオートマチックトランスミッションの構造を理解する必要があります。
オートマチックトランスミッションは、トルクコンバーター、ギヤボックス、油圧制御系という大まかに分けて三つの構造体で構成されています。
マニュアルトランスミッションと比較してみるとトルクコンバーターはクラッチ、それ以外は基本的に同じ構造を取っていることになりますので、大きな違いとなるのはトルクコンバーターとクラッチに違いということになりますが、ギヤボックスの構造もマニュアルトランスミッションとはちょっと違うものが使われていますが機能は全く同じです。

さて、オートマチックトランスミッションの一つの構造体となっているトルクコンバーターですが、これはもともとはエンジントルクを増大させるために作られたものだったのですが、流動体を使った構造を持ち、トルクの伝達量を自由に設定することができることからオートマチックトランスミッションのクラッチの代わりとして使われ始めました。

トルクコンバーターの構造を簡単にいうとオイルの満たされた容器の中にそれぞれのプロペラは別体式となっている3つのプロペラみたいなものが同じ軸線上に付けられています。
その三枚のプロペラの片方の端にあるプロペラを回すとオイルが撹拌され、そのオイルの流れが中央にあるプロペラで整流、そしてもう片方の端にあるプロペラにオイルの流れが伝わり、そのプロペラも回り始めます。
これがトルクコンバーターの原理です。

これを実際の構造に当てはめてみると最初に回り始めたプロペラがエンジンのクランクシャフトに直結した状態で付けられているタービンというもの、整流機能を持つものがスタータというもの、そして最後にオイルの流れを受けて回り始めるのがギヤボックスに直結した形で付けられているポンプというものです。
エンジンの回転によって回されるタービンでオイルの流れを作り、ステータが回り始めて整流とオイルの流れをさらに強め、その流れによってギヤボックスにつながるポンプが回り始める・・・、これがトルクコンバーターの仕組みです。

クランクシャフトに直結したタービンとギヤボックスに直結したポンプは物理的にはつながってはおらず、オイルという液体の力で同じ方向に回り始めるという構造を持っているため、仮にポンプ側を固定したとしてもオルの中でジャバジャバとタービン側は回り続けることができるので、車を止めていてもエンジンを回し続けることができるということになります。

 

常にオイルは動いている

エンジンをかけた状態でセレクターレバーを走行するレンジに入れるとタービンが回ります。
これは車のスピードと全く関係なくです。
ということは、トルクコンバーター内部では少なからずともオイルの循環は行われており、常にポンプを回そう回そうという力が生まれているのです。

この状態でブレーキペダルを踏んで、タイヤの回転を止め、ドライブトレーンの回転を止め、トランスミッションのギヤボックスの回転を止めていれば、いくらトルクコンバーターでタービン側、要するにギヤボックスを回そうとしても回すことはできません。
しかし、ブレーキペダルを放して、フリーの状態にするとわずかに発生しているオイルの流れでポンプ側が回りはじめようとし、それがギヤボックス、ドライブトレーン、タイヤを回しはじめ、車が走り出します。
これがクリープ現象です。

ですので、DレンジやRレンジなどにセレクターレバーを入れてあるときは、ドライブトレーンに常に走り出す方向に力が加わっており、更に車は常に走ろうとしているということになります。

 

油断してはいけない

車の運転はドライバーが走らせようとした時に走ってくれて、止まりたいと思った時の止まることができるというのが一番安心できる状態です。
しかし、オートマチックトランスミッションモデルにクリープ現象があることによってそうではなくなることになります。
実はこのクリープ現象の存在によって事故を起こす方がいるのです。

オートマチックトランスミッションが普及し始めた頃は、クリープ現象があることすらあまり知られていなかったので、ブレーキペダルを踏まないまま、Dレンジに入れてしまうとか、ブレーキペダルをすぐに放してしまうことによって衝突事故が多発していました。
オートマチックトランスミッションが当たり前となった現在ではさすがにそういった事故はほとんどありませんが、また別の事故が起こるようになりました。

その一つが、車が走り出したのに気が付かないで衝突してしまう事故です。
車を止めようとするときは、当然ですがしっかりとブレーキペダルを踏むことになるのですが、長い信号待ちや渋滞といった長時間、ブレーキペダルを踏み続けなければならないとなった時に、疲れているのでしょうか、それとも眠いのでしょうか、だんだんブレーキペダルを踏んでいる力が抜けていってしまい、クリープ現象を抑えることができないぐらいまでブレーキペダルを緩めてしまい、走り始めてしまうということになるのです。
走り始めれば気が付きそうなものですが、クリープ現象だけではあまりスピードが出ないため、意外と走り出したことに気が付かないので、そのまま前にある壁や車に衝突してしまうのです。

そして、更にここ最近よく聞くようになった事故にも発展する可能性もあります。
これは思ってもみない時に走り出してしまい、それに急に気が付いたことによって、気が動転したのでしょうか、ブレーキペダルを踏まないでアクセルペダルを踏んでしまい、より一層鋭い加速になることによってタイヤ止めも乗り越え最終的には店舗などに突っ込んでしまうのです。

オートマチックトランスミッションモデルでは、セレクターレバーをDレンジやRレンジなどに入れた時は常に緊張感を持ち続けましょう。
もし、気を抜きたかったらPレンジに入れてサイドブレーキもかけておくのがいいと思います。

現在では、衝突防止の自動ブレーキや踏み間違え感知機能などが付いた車が増えていますので、こういった事故も将来的にはほぼゼロに近い状態にまで持って行けるのではないでしょうか。